「新品じゃない傷とか、再生って、かっこいいと思うんです」アーティスト 下田昌克

画家・イラストレーターとしての活動を軸に、近年では恐竜の骨をキャンバス地で製作したアートピースも話題の下田昌克さん。コム・デ・ギャルソンとのコラボレーションを始め、各国での展示も大きな評判を呼んでいます。高校卒業以来ずっと使っているという秘密基地のようなアトリエにてお話を伺いました。

「いつもは雑誌の仕事とか、絵本とか、絵を描く仕事をしています。8年前から趣味で恐竜を作り始めて、それがだんだん世の中に出て行くようになったので、最近はその恐竜の仕事なども発表しながら、絵を描いてます。

この絵本『ぶたラッパ』(そうえん社)では僕の絵に谷川俊太郎さんが文章をつけてくれたり、こちらは一番最初の本『PRIVATE WORLD』(山と溪谷社) 。僕が海外旅行をしながら日記を書いたり人の絵を描いたりしていた時のもので、これをきっかけに絵の仕事を始めました。こちらは『恐竜人間』(パルコ出版)、最近の恐竜の本で谷川俊太郎さんの詩と藤代冥砂さんの写真と一緒に作られています」。

自分は絵描きなので、恐竜たちの立体作品も
平面の思考から成り立っているんです

各国の展示から戻ってきた恐竜の骨たちが、うず高く積まれている下田さんのアトリエ。
恐竜作品の制作はどんな所が大変なのでしょうか?

「全部(笑)。立体というところ。たぶん絵描きなので頭の中では二次元で考えているから、いくつ立体を作っても、まだやっぱり二次元で(笑)。いつも横顔を布に描いて切り抜いて、ああでもない、こうでもないと正面から見て、足したり削ったりしながら作ってます。いまだ立体の作り方がわからず、必死で作っている状況です」。

白と黒のTOBIRAEにふさわしい恐竜、
サイズと顔つきを重視して

 今回TOBIRAEに提供してもらった白と黒、二つの恐竜作品についてお話を伺いました。

「最初、大きさとか考えていて(扉に配置するのに)ちっちゃくても物足りないし、大きすぎても悩ましく。サイズと顔つきで選びました。横顔が恐竜らしいものを選びました。

黒の冷蔵庫については、いつも白い骨を黒バックで浮かび上がらせて撮影してもらうことが多かったので、イメージがつきやすかったですね。白の冷蔵庫は素材の布を巻きつけたり貼り付けたりしたような感じが良いかなあと、まず布で背景部分から作ってみました。背景に骨を刺繍して、その上にガイコツを乗せて撮影しました。白というよりは全体的に生成りの仕上がりですね。もともとボディが白と黒、恐竜の骨も白なので、当初より他の色は入れずに作ろうと思っていました」。

新品じゃない傷とか、再生って、かっこいいと思うんです。
顔があるのが生き物っぽくて可愛いよね(笑)

役目を終えた冷蔵庫をアートピースに変換するという試みについて。下田さんはこう語ります。

「再生ってかっこいいじゃないですか。新品じゃないとか、傷とか、新しいものも好きだけど、アイディアが面白いなあと。違うカタチに生まれ変わるっていうのはかっこいい。なんかモノを作ってると、新品を作ってるんだけど、素材を使ったり、それを見て自分の考えが入ったり。再生という自分なりの解釈、ものづくりと繋がりやすいと思うので理解したつもりになって作っていましたよ」。

冷蔵庫スピーカーからお気に入りの曲を流しつつ、その感想も聞かせてくださいました。

「いい音ですよ。奥行きがあるからなのかな? 中に顔があるのが生き物っぽくて可愛いよね(笑)中で何かが起こってるみたい。冷蔵庫で何か飼ってるみたいな。もともと布に綿を詰めてガイコツ、骨とか、固いのか柔らかいのか良く分からないものが、こうして固い冷蔵庫の扉に載ってるのも面白いね」。

所狭しと作品や画材、フィギュアたちが並ぶ下田さんのアトリエ。専用の屋上は新宿の高層ビル群を見渡す特等席。その作品やお人柄と同様に、とても気持ちの良い風が吹き抜ける場所でした。下田さん、ありがとうございました。


撮影:野崎 航正
取材:TOBIRAE編集部

アーティスト・下田昌克

1967年兵庫県生まれ。書籍のイラストなどを手がけ、2014年よりプライベートワークでハンドメイドの恐竜の被り物を作り始める。その作品のユニークさから、詩人の谷川俊太郎、写真家の藤代冥砂とともに一連の恐竜作品を発表。主な著書に『恐竜がいた』(スイッチ・パブリッシング)、『恐竜人間』(パルコ出版)、『PRIVATE WORLD』(山と渓谷社)など。